広告予算の決め方は、売上目標や業界平均から逆算するのではなく、事業を続けるために出せる顧客獲得コストの上限から必要な成約数を導き、計測のズレを見込んで割り増した目標CV数で予算を組むのが、データのない中小企業に無理のないやり方です。

「広告予算の決め方」を調べると、売上目標から必要予算を割り出すタスク法や、売上高の一定割合を広告費にあてる売上高比率法など、いくつもの計算式が出てきます。ただし、これから広告をはじめるなか小企業にはCVRや目標CPAといった実績データが無く、業界平均も業種ごとの差が大きいため、そのまま当てはめようとすると手が止まってしまうのではないでしょうか。

今回は、実績データが無い中小企業でも無理なく広告予算を決められる逆算の考え方と、具体的な試算例、少額予算での運用の工夫、そして続けるか止めるかの撤退ラインの決め方まで解説します。

この記事でわかること

  • 中小企業の広告予算を「出せる上限」から逆算して決める考え方
  • タスク法や売上高比率法が立ち上げ期の中小企業でつまずく仕組み
  • 顧客単価3万円のケースで実際に予算を試算する手順
  • 少額予算でも成果を出す運用の工夫と撤退ラインの見極め方

広告予算の決め方は出せる上限からの逆算が答え

広告予算の決め方は、売上目標ではなく事業を続けるために出せる顧客獲得コストの上限から逆算するのが答えです。

タスク法のように売上目標から必要な広告費を割り出す方法は、目標CVRや目標CPAという実績データが前提になっており、まだ配信実績のない中小企業には逆算の起点そのものがありません。売上高比率法のように業界平均を目安にする方法も、業種によって適正な広告費の水準が異なるため、そのまま自社に当てはめると過大投資にも過小投資にもなりかねません。

だからこそ、実績データや業界平均ではなく、事業を続けるうえで無理なく出せる顧客獲得コストの上限という、経営者自身が把握している数字を起点にするほうが現実的です。

売上目標からの逆算と出せる上限からの逆算を比較するインフォグラフィック

よくある広告予算の決め方が中小企業でつまずく理由

広告予算の決め方としてよく紹介されるタスク法や売上高比率法は、いずれも中小企業がそのまま使うには前提条件が合わないという共通の壁があります。ここでは、その理由を2つの観点から確認します。

データのない立ち上げ期は必要CV数を計算できない

タスク法(目標逆算法)は、目標CPAと目標CVRという実績データを掛け合わせて必要CV数を出す方法のため、これから広告をはじめる立ち上げ期の中小企業には計算の土台となる数字がありません。

目標CPAは過去の配信実績から、目標CVRはランディングページの実測値から出すのが前提です。まだ広告を配信していない、あるいは配信をはじめたばかりの企業では、この2つの数値自体が推測にしかならず、逆算した予算も根拠の薄いものになってしまいます。

業界平均の売上比率は業種でばらつき目安にしにくい

売上高比率法は自社の売上高に業種平均の広告費比率を掛けて予算を出す方法ですが、この比率は業種によって異なるため、一律の目安として使うには無理があります。

東京商工リサーチの調査によると、2023年度に宣伝費を計上した企業の売上高に対する宣伝費比率は全業種平均で1.3%にとどまる一方、職業紹介業は18.8%、化粧品小売業は18.4%と、業種によって10倍以上の開きがあります※1。この差は、顧客獲得の競争が激しい業種ほど広告費への依存度が高くなることを示しており、自社の業種の実態に合わない平均値をそのまま予算の目安にするのは危険です。

2つの方法の前提とつまずく理由を整理すると、以下のとおりです。

方法 逆算の前提 中小企業でつまずく理由
タスク法(目標逆算法) 目標CPA・目標CVRの実績データ 立ち上げ期は根拠となる実績データが無い
売上高比率法 業種平均の広告費比率 業種による比率の差が大きく目安にならない

中小企業の広告予算を逆算する4つのステップ

広告予算を逆算する4つのステップを示すフロー図

中小企業が無理なく広告予算を決めるには、売上目標からではなく、事業を続けられる範囲の数字から逆算する4つのステップを踏みます。以下の順番で数字を積み上げていきます。

出せる顧客獲得コストの上限をヒアリングで決める

最初のステップは、売上目標を聞くのではなく、事業を続けるうえで1件の成約にいくらまでなら出せるかという顧客獲得コストの上限をヒアリングで引き出すことです。

経営者自身が把握している「出せるギリギリのライン」は、まだ実績データが無い立ち上げ期でも答えられる数字です。この上限額が、以降のステップすべての土台になります。

事業を続けられる必要な成約数を割り出す

次に、その顧客獲得コストの上限を踏まえて、事業を続けるために最低限必要な成約数を割り出します。

必要な成約数は、1件の大型契約が取れれば十分な事業もあれば、月に数十件の成約が必要な事業もあり、業態によって変わります。ここで出す数字は、売上を最大化するための件数ではなく、事業を継続できる最低限のラインです。

計測のズレを見込み目標CV数を3〜5倍にする

広告の計測CVは実際の成約と一致しないため、目標CV数は必要な成約数の3〜5倍に割り増します。

電話番号のクリックやWeb予約ボタンのタップといった計測しやすいCVポイントは、実際に来店・成約まで至った件数を正確には捕捉できません。この計測のズレを見込んで目標CV数を割り増しておけば、広告の予算が実際の成約数に対して不足する事態を避けられます。

目標CV数から月の広告予算を逆算する

最後に、割り増した目標CV数に想定CPAを掛け合わせて、月の広告予算を逆算します。

想定CPAは、媒体の相場や過去の類似事例から仮置きします。この計算で出た金額はあくまで一次試算であり、次項で実際の数字を使って試算の流れを確認します。

顧客単価3万円で広告予算を試算する例

ここでは、顧客単価の上限を3万円と仮定し、実際に月の広告予算を試算する流れを2つのステップで確認します。

顧客単価の上限と必要成約数から試算額を出す

顧客単価の上限3万円に必要な成約数5件を掛けると、月の広告予算の試算額は15万円になります。

この試算は、顧客単価の上限×必要な成約数というシンプルな掛け算で出せます。実際の数字を整理すると、以下のとおりです。

項目 数値
顧客単価の上限 3万円
必要な成約数 5件
試算した月の広告予算 15万円

試算はたたき台で最終額は相談して決める

この15万円という数字はあくまで最初のたたき台であり、最終的な予算額は経営者との相談を通じて決めます。

実際に、この試算値をもとにディスカッションを重ねた結果、経営者の意向で月30万円(広告代理店の手数料は別)に着地したケースがあります。「広告予算はいくらくらいが良いか」と尋ねられることもあり、出せる金額の上限を聞く方法と試算する方法の両方を組み合わせながら、落としどころを決めています。

MOCO Worksでは、運用をはじめたあとの減額・増額にも対応する前提でも進めています。

少額の広告予算でも成果につなげる運用の工夫

広告予算が少額であっても、CVポイントの設定次第では十分な成果につなげられます。ここでは、その工夫を2つ紹介します。

緩めのCVポイントで月30〜50件のCVを確保する

少額予算では、ページビューのような軽いCVポイントではなく、電話番号のクリックやWeb予約ボタンのタップといった緩めのCVポイントを設定し、月30〜50件以上のCV数を技術的に確保する運用が有効です。

実際に、月5万円という少額予算の医療系クライアントでも、この形式で運用を継続している例があります。ただし、この方法が成立するかは業種によって差があり、どの業種でも同じ結果が出るとは限りません。

機械学習が回る件数を予算額より優先する

広告の機械学習は一定数のCVが蓄積されないと精度が上がらないため、予算額そのものよりも、まず学習が回るだけのCV件数を確保することを優先します。

CV数が少ないまま広告費だけを増やしても、学習が進まず配信の精度は上がりません。緩めのCVポイントを使う工夫は、この学習に必要な件数を少額予算でも確保するための手段でもあります。

広告予算を続けるか止めるか撤退ラインの決め方

広告予算を続けるか止めるかの撤退ラインは、固定の数値で機械的に決めるのではなく、反響を見ながら都度判断します。判断の考え方を4つの観点から確認します。

固定の数値でなく反響を見て都度判断する

撤退ラインは、あらかじめ決めた数値ルールに従うのではなく、経営者への反響状況をヒアリングしながら都度ディスカッションして判断します。成果につながっていないと判断した場合は、広告を一時停止し、ランディングページやサイトを改善したうえで再開する場合もあります。

業種のリードタイムで見極め期間は変わる

判断までにかける期間は、業種ごとのリードタイムによって変わります。

医療系のように予約から来院、成約までがすぐに完結する業種では1か月単位で判断できます。一方、見込み客の登録からアプローチ、成約までの期間が長い業種では、判断に数か月から6か月ほどかかるケースもあります。

データ蓄積のため最低3か月は継続する

業種を問わず、広告の効果を判断できるだけのデータを蓄積するには最低3か月の継続が必要です。

この3か月という下限は、配信初期の学習期間や季節変動を除いた実態を見るために必要な期間です。最終的な継続・停止の判断は経営者次第ですが、この期間を確保したうえで判断することをおすすめしています。

成果が出なければ一時停止しLPを直して再開する

3か月を経過しても成果が出ない場合は、広告を一時停止してランディングページを改善し、再開するという選択肢もあります。

実際に、Microsoft ClarityやGA4、Search Consoleでユーザーの行動を分析したところ、スクロール深度や離脱ポイントから「ページに詳しい情報が無く、情報を探すために離脱していた」ことが分かったケースがあります。ランディングページを修正したあとは、ページ内からの離脱が明確に減り、そのままコンバージョンに至るようになりました。

広告を続けるか止めるかを判断する撤退ラインの考え方を示すフロー図

広告予算の決め方に迷ったらゴールから一緒に逆算しよう

広告予算の決め方に迷ったときは、まずはゴールから一緒に逆算してください。売上目標や業界平均をそのまま当てはめるのではなく、事業を続けるために出せる金額の上限からヒアリングを重ね、無理のない予算とCVの目標を一緒に組み立てます。

試算はあくまでたたき台であり、実際の予算は運用をはじめた後の反響を見ながら調整します。広告予算の決め方に迷っている方は、まず現状を聞かせてください。

参考・出典情報