インハウスSEOは、採用・育成に本気で投資し、会社全体で支えられる体制がある企業でなければ、長く続けることが難しい取り組みです。「外注のコストを抑えたい」「自社の知見をもっと発信に活かしたい」という理由で、内製化を検討しはじめた方も多いのではないでしょうか。ただし、採用や育成のハードルの高さに立ち止まっているケースも少なくありません。

今回は、インハウスSEOの検討が進まない理由と、内製化で成果を出すための条件を解説します。あわせて、AI任せの内製で実際に更新が止まってしまった実例を踏まえ、インハウスSEOと外注のどちらを選ぶべきかの判断軸をお伝えします。

この記事でわかること

  • インハウスSEOがどのような企業に向いているのか
  • 内製化の検討が進まない4つの理由
  • 内製化で成果を出すために欠かせない3つの条件
  • インハウスSEOと外注、自社に合う選択肢の見極め方

インハウスSEOは体制に本気で投資できる企業だけに向く

インハウスSEOという選択肢は、だれにでも合う方法ではなく、採用と育成に本気でリソースを割ける企業のためのものだと考えています。

SEO担当者を採用してから成果が出るまでの間、人件費と教育コストがどれだけかかるかを把握しなければなりません。そのコストが、SEOで得られるリターンに見合うかを冷静に見極めることが欠かせません。

加えて、自社に合った運用ルールが最初から整っている企業はほとんどありません。次の項目まで、自社の実情に合わせて1つ1つ作り込む時間がかかります。

  • 記事の書き方
  • 公開の判断基準
  • 効果測定の方法

育成した担当者へ知識をインプットし続ける体制も欠かせません。この取り組みが一度止まってしまうと、その人材自体が宙に浮いてしまうリスクを抱えることになります。

インハウスSEOの検討が進まない4つの理由

インハウスSEOの検討が進まない4つの理由を示す図解

実際にインハウスSEOの内製化を検討しはじめても、企業がスタート地点で足踏みをしています。検討が進まない理由は、大きく次の4つに集約されます。

採用コストの高さ

SEO担当者の採用には、想像以上のコストがかかります。情報サービス業では、正社員が不足していると回答した企業が2026年4月時点で66.7%にのぼりました※1。単月の増減はあるものの、4年連続で半数を超える高水準が続いています※1

IT・マーケティング関連の人材獲得も、依然として厳しい状況です。SEOの知見を持つ人材はこのなかでもさらに限られており、採用にかかる費用と時間は決して小さくありません。

応募者の技量を見極める難しさ

仮に応募が集まったとしても、その人がどれだけSEOの実務をこなせるのかを見極めるのは簡単ではありません。面接だけでは実務レベルの判断力や文章の質を測りにくく、採用してから期待とのズレに気づくケースも珍しくないというのが実情です。

育成のルールが社内に整っていない

採用できたとしても、次に立ちはだかるのが育成の壁です。何を教え、どのレベルまで引き上げれば独り立ちできるのか、社内に明確な指針がないまま担当者に丸投げしてしまう企業は少なくありません。育成の道筋が見えないことが、検討そのものを止めてしまう原因になっています。

AIがあれば人は要らないという誤解

AIの登場をきっかけに、内製化の検討自体が棚上げになるケースも見られます。「AIがあればもう人を雇わなくていいのではないか」という発想からいったん立ち止まってしまう、というものです。

ただしAIはあくまで文章を作る道具であり、SEOで成果を出すための戦略や判断まで代わりに担ってくれるわけではありません。詳しくは後述の実例で触れます。

インハウスSEOで成果を出すための3つの条件

インハウスSEOで成果を出すための3つの条件を示す図解

内製化で成果を出している企業には、共通する条件があります。条件は次の3点に集約されます。

妥協しない人材への投資

成果を出している企業に共通するのは、人材に本気でお金をかけて採用・育成している点です。中途半端な予算感で採用や教育に取り組むと、担当者のスキルが実務レベルに届かないまま現場に出すことになり、成果につながりません。

担当者任せにしない情報共有の仕組み

採用した担当者に会社の魅力や発信すべき情報を共有し、1人に任せきりにしない仕組みを作ることも欠かせません。入社したばかりの担当者は、まだ自社の強みを深く理解できていません。

何を伝えるべきかを会社側(上司や周囲のメンバー)が示し、共有し続ける必要があります。この仕組みがなければ、担当者任せの体制はいずれ行き詰まります。

効果測定までやり切る技術基盤

記事を公開して終わりにせず、効果測定まで一貫してやり切れる技術基盤を整えることも欠かせない条件です。アクセス解析やGoogleサーチコンソール(用語:表示回数やクリック数を確認できるGoogleの無料ツール)のデータを見ながら改善します。

この作業は担当者1人だけでは対応しきれない技術的な壁にぶつかりやすく、ここまで含めて整えられるかが成果の分かれ目になります。

AI任せのインハウスSEOで更新が止まった実例

AIに頼るだけの内製化は、更新が止まってしまうリスクを抱えています。 実際に私が確認した実例をもとに、何が起きたのかを見ていきます。

10本で更新が止まった経緯

2025年ごろ、ほかの業務でGoogleサーチコンソールの権限をお預かりしていたIT系企業様がありました。この企業様は、私たちに相談することなくAIだけで記事を作成し、自社サイトに公開する形を選ばれました。その結果、更新が続いたのは10本ほどまででした。

順位はついても問い合わせにつながらなかった理由

公開された記事は、AIだけで作成したために内容が薄く、問い合わせにはつながりませんでした。記事によっては検索順位はついたものの、導線(CTA、用語:読者に取ってほしい行動へ誘導するボタンやリンク)を用意していませんでした。そうした記事は、「読まれるだけ」で終わるケースもありました。

サイト自体の読みにくさという技術的な課題も重なり、表示回数とクリック数は伸びずに徐々に減少していきました。

AIの知識だけでは補えなかったSEOの視点

敗因は、AIについての知識や使い方は持っていても、SEOの知識が無かったことだと考えています。 IT系企業であってもAIリテラシーとSEOの判断力は別物であることを示す実例だと感じています。

担当者の離脱でインハウスSEOが止まるリスク

担当者が離れた瞬間に、インハウスSEOの取り組み全体が止まってしまうリスクがあります。 このリスクは大きく2つの側面から考えられます。

属人化するとマーケティング全体が止まりかねない

SEOの内製化を1人の担当者に依存させたままにすると、その担当者が異動や退職で抜けた際に体制が崩れかねません。SEOに限らず、マーケティング活動全体が止まってしまう可能性もあります。

これは私自身がまだ直面した実例ではありません。ただし、書いたら書きっぱなしで担当者が離れてしまう可能性も含めて、十分に起こり得るリスクとして考えておく必要があります。

代わりの人材を採用しにくい市場環境

仮に担当者が離脱しても、代わりの人材をすぐに採用できるとは限りません。経済産業省の試算では、IT人材の需給ギャップは2030年に中位シナリオで45万人に達すると見込まれています※2。需要の伸びが大きい高位シナリオでは、79万人まで拡大する可能性があります。

情報サービス業の人材不足感も高止まりしており※1、SEOの知見を持つ後任をすぐに見つけるのは簡単ではありません。

インハウスSEOと外注どちらを選ぶべきか

インハウスSEOと外注のどちらを選ぶべきかは、二択ではなく自社の体制次第で決まります。 内製化と外注では、向いている企業の条件が次のように異なります。

項目 内製化が向くケース 外注が向くケース
予算のかけ方 採用・育成へ継続して投資できる 限られたリソースで成果を目指したい
社内体制 会社全体で情報共有・効果測定まで支えられる 情報共有や効果測定まで担当者1人に負荷が集中しやすい
リスクの受け止め方 担当者の離脱リスクを織り込める 属人化のリスクをできるだけ避けたい

判断のポイントを3つの視点から整理します。

体制を整えられるなら内製化を検討する

体制面の条件を満たせる企業にとって、内製化は自社の知見をそのまま発信力に変えられる選択肢です。ただし、ここまで紹介した条件をすべて満たせる企業は決して多くないというのが実感です。

体制が整わないなら外注が合理的な現実解

体制面の条件が整わない企業にとって、外注を選ぶことは妥協ではなく合理的な判断です。内製化にかかるコストとリスクを避けながら成果を目指す、現実的な選択肢だと考えています。

外注でも一次情報を引き出すパートナーを選ぶ視点

外注を選ぶ際は、自社の一次情報をどれだけ引き出そうとしてくれるパートナーかを基準にしてください。だれにでも書けるような一般論だけの記事を量産する外注と、自社の経験や知見を引き出しながら形にしてくれる外注では、読者に届く納得感が異なります。丸投げが悪いわけではなく、内製化に匹敵する納得感を外注でも得られるかが、パートナー選びの分かれ目になります。

自社に合うSEO体制をまず無料相談で診断しませんか

インハウスSEOが自社に向いているのか、それとも外注を選ぶべきなのか、判断に迷う場合はまず現状の体制を一緒に整理するところからはじめませんか。話をうかがうだけでも構いませんので、お気軽にご相談ください。

参考・出典情報